お客様について
従業員約300名、国内5拠点を展開する製造業のお客様です。国産ERPパッケージを導入済みで、社内のコミュニケーションや日報・議事録の管理にはグループウェアを活用されていました。
お客様の課題
大きく2つの課題をお持ちでした。
1つ目は、現場の情報が経営に活かしきれていないという課題です。営業部や製造部のメンバーからマネージャーや経営層に対して、グループウェアを通じて日報や議事録が日々送られてきます。しかし、5拠点・300名規模の組織では情報量が膨大で、すべてに目を通すことは現実的に困難です。結果として日報の確認が形骸化し、重要な情報が埋もれてしまっていました。一方で、経営にとって本当に必要な「現場の生の声」——取引先の動向、製造現場のトラブル、顧客からのフィードバック——は、まさにこうした日報や議事録の中に含まれているという認識をお持ちでした。
2つ目は、ERPに蓄積されたデータが活用されていないという課題です。ERPを導入済みではあるものの、各部門がデータを入力するばかりで、蓄積された売上・コスト・生産データを分析し、経営判断に活かすというアウトプットの仕組みがありませんでした。「データは溜まっているのに、それを見て判断する手段がない」という状態です。
提案内容
この2つの課題に対して、定量データと定性データを掛け合わせて分析する「経営分析プラットフォーム」を提案しました。まずはPoC(概念実証)として限定的なデータで効果を検証し、段階的に本格導入へ進めるアプローチを取っています。
定量データの可視化と分析基盤
ERPに蓄積された売上・コスト・生産実績などのデータをTableauで可視化するダッシュボードを構築。経営層が日次・週次・月次で主要KPIを俯瞰できる環境を整えます。さらに、AIを活用したデータ分析機能を組み合わせることで、「今月の売上変動の要因は?」「製造コストが増加している部門はどこか?」といった経営上の問いかけに対して、データに基づいた分析結果を導き出せる仕組みを提案しました。
AIモデルについては、お客様が用途やコストに応じて選択できるよう、ChatGPT・Gemini・Claudeといった主要なフロンティアモデルに対応する設計としています。
定性データとのクロス分析
このプラットフォームの核となるのが、ERPの「数字」とグループウェアの「言葉」をクロスさせる分析機能です。Tableauのダッシュボードで浮かび上がった数値の変動に対して、AIがグループウェア上の日報や議事録から関連する記述を自動的に紐づけて提示します。
以下は、クロス分析によって得られる分析のイメージです。
Tableau上で、ある拠点の月次売上が前月比で大きく伸びていることが確認されたとします。AIがこの変動に関連する日報を検索すると、数ヶ月前の営業部日報から「A社から新規案件の引き合いがあり、見積もりを提出した」という記録が見つかり、さらに翌月の日報では「A社案件の受注が確定、初回納品を完了」という報告が紐づきます。数字だけでは見えない、受注に至るまでの営業活動の経緯が可視化されます。
ERPのデータから、ある製造ラインの歩留まり率が低下傾向にあることが検出されたケースです。AIが関連する日報・議事録を探索すると、製造部の設備保全に関する議事録から「主要設備の経年劣化が進んでおり、部品交換を計画中」という記述が見つかります。さらに直近の日報では「代替部品の納入が○月に確定、設備更新は○月完了予定」という進捗も確認でき、数字の異常に対する原因と対応状況を一気通貫で把握できます。
Tableauのダッシュボードで特定の製品群の在庫回転率が急速に上がっていることが確認されたとします。AIが営業部の日報を検索すると、「B業界の顧客から同製品の問い合わせが増えている」「展示会で反響が大きかった」といった複数の報告が見つかります。ERPの数字が示す需要変動の「なぜ」を、現場の肌感覚で裏付けることで、増産判断や営業リソース配分の意思決定を支援します。
このように、データの異常や変動を検出するだけでなく、「なぜそうなったのか」「現場ではどう対応しているのか」まで一つの画面で把握できるプラットフォームを目指しています。
段階的な導入アプローチ
まずはPoCとして、特定の部門・特定の期間のデータに絞って効果を検証します。データの品質や分析精度を確認した上で、対象範囲を全拠点・全部門に拡大していく計画です。
System Overview
期待される効果
- 経営層がデータに基づいた迅速な意思決定を行える環境が整う
- これまで形骸化していた日報・議事録が、経営資源として再活用される
- 定量(数字)と定性(現場の声)の両面から、経営状況を多角的に把握できる
- PoCによるスモールスタートで、投資リスクを抑えながら効果を検証できる